REPORT (GUEST)

OPEN LAB アイデア閉塞を打破! “シーズ/ニーズの最適マッチングとは”

分野   

Post : 2012.02.15
Permalink : https://catalyst-ba.com/archives/445

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2月9日(木)、クリエイティブ・シティ・コンソーシアム OpenLab#11が開催されました。
今回は、世の中のビジネスパーソン誰しもが抱える難題「ビジネスのシーズとニーズはどうマッチングできるのか?」をテーマに、シーズ側、ニーズ側それぞれのゲストを迎え、「SNeeeds(http://sneeeds.com/)」という革新的なシステムによりマッチングの促進を目指すIPエレクトロニクス株式会社代表の大槻悦理氏をモデレーターに、シーズ側、ニーズ側双方の問題提起と課題解決の為のアクションについて、コンソーシアム会員企業他多数の参加者と対話を行いました。

モデレータ:IPエレクトロニクス株式会社 代表取締役 大槻悦理氏
ゲスト  :ダイアゴナル株式会社 代表取締役 山川隆氏
株式会社MRSホールディングス 代表取締役 松原高司氏
ケアプロ株式会社 取締役副社長 守屋実氏
株式会社インスパイア 取締役副社長 見満周宜氏
司会進行 :東京急行電鉄株式会社 東浦亮典氏

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■アイスブレイク

①日常的な仕事の中で「こういう技術やサービスがあったら助かる!うまくいくのに!」を1つ考えて隣同士で紹介。
付箋に書いたものを前面に貼りだし。
「デザイナーの業務委託を登録するサイト」
  ⇒フリーランスでデザイナーをやっているのだが、いろんな会社から受注したいと思いつつ、きっかけが少ない
「A4印刷サイズでA3印刷ができるプリンタ」
  ⇒A3を折って、袋とじが印刷
「もっと軽く簡単に取れるカメラと空中画面」
  ⇒フォトグラファーをしていて、機材を持っていくのが苦労。iPhoneくらいのサイズ手軽さでも一眼レフのようなキレイさがほしい。アウトプットしたものをデジタル技術でいつでもどこでも投影できて、未来の世界みたいに表示できるといい。
などのアイデアが出ました。

②今度は日常的な仕事から離れ、発明家になった気分で「自分がこんな技術・サービスの発明をして世の中を変える!」を1つ考えて、また違う人同士で紹介。
「忘れ物を簡単に見つけてくれる家」
  ⇒家でよく物をなくす。奥さんとケンカになる。カメラをいろいろな箇所につけて、大事な物の場所を記録してくれるといい。
「マイクロウェーブを電気に変換する技術」
「着る福祉用具」
  ⇒福祉用具は付けていることに抵抗があるが、着てしまえばいい、というものがあるといい。
「嘘かどうか色でわかるテレビ」
  ⇒国会中継を見ていてがっかりすることが多いので。
などのアイデアが出ました。

これらのアイデアをビジネスとして実現していくことは本当のところは難しい、ということで、シーズ側、ニーズ側それぞれのゲストからショートスピーチをしていただきました。

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■seeds1:松原氏「講座を必要としない~送受金発明~送金革命」
松原さんは発明家として、普段は企業向けの新しい発明を仕事としていますが、今回はエンドユーザーに近いところでの発明事例をプレゼンテーションしていただきました。
「現在、送金=口座が必要。銀行の営業時間に処理される。しかし、今決済のタイミングは昼間ばかりではない。口座は特定のための様々な情報が必要なので、だったら口座なくてもよければいいのに、と思った。」
「まず銀行を外して、クレジットカードをベースに考える。利用枠を取引することによってお金を変動させる。クレジットカードを作るために銀行口座必要では?という問いに対しては…」
「利用可能枠」:発行時は0円、とする
①送金手続きのためにスマホで手続きするとバーコードが出る
②コンビニに行って手続き(現金支払)
③相手方に通知(サーバを介して)
というような手法を取れば解決できる。とのこと。
現在、とあるクレジット会社と実証実験中だそうです。

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■seeds2:山川氏「ダイアゴナルキット」
山川さんは商社勤務時代にITビジネス会社の立ち上げをした経験があり、今回も「ダイアゴナル」という新しいコミュニケーションの仕組みを開発しています。
「『アドレス』というと住所のことしか指してなかったが、今はメールアドレスを指したり、『ページ』といえば呼び出す、という意味だったが新しいサービスが流通することによって言葉の意味も変わり、文化も変わっていくもの。」
「そのアドレスに着目して、さまざまなアドレスを介してダイアゴナル=対角線で人と人がつながる、という意味を込めたサービスを開発している。キットはKeep In Touchの意味。SNSと一緒じゃないか?というが、人と人の1対1の関係をつなぐものなので別。」
1対1の関係からなるDBを1人1人が持つ。
1000人クローズな関係で名刺交換すると1人999枚交換することになる。
整理するためには999,000件のデータ入力が必要。
これを1人ずつ最初からDBができていれば1,000件ですむ。
電子メールをベースにDBを紐づけるとメールのやり取りだけでデータ処理される。
「属性情報などが変わっていくが、その更新は、本人が書き換えるとみんなのDBも書き換わることで解決できる。ニフティ時代にメールのサービスを広める時に苦労した時に近い感覚がある。電話も、大昔はそうだったが、文化を創造するということはこういうこと。」

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■needs1:守屋氏「新規事業の創出」
守屋さんは、機械工業系の新規事業の立ち上げに10年携わり、その後エムアウトという事業開発会社を立ち上げました。
「エムアウト=マーケットアウトで、自社のリソースで事業を作り、他社に売るスタイル。過去には学童保育のサービスを立ち上げて鉄道会社に売却したこともある。これまでの仕事という意味のキャリアとは別に『パーソナルキャリアチャート』というものもあり、別に会社を作ったり、飲食店を経営したりなどしていた。」
「最初は、入社したミスミでアスクルのような医療寄りの備消耗品販売の新規事業を行った。その経験が生きて、ミスミの創業オーナーと共に新規事業の開発を自分達で行い、市場に売却するエムアウトという会社を立ち上げた。現在3つの事業に携わっている。」
①「ケアプロ」:ワンコイン検診。定期健康診断を受けていない人が多いので、気軽に受けられるサービス。
②「ラクスル」:印刷サービス。印刷のネット化がどんどん増えてきて、そのポータルを行っている。
③「博報堂ユニバーシテイ・東京グルメ」:日本のいいものをASEANに売っていくサービス。

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また、守屋さんの講演の際にはケアプロの「ワンコイン検診」サービスの無料体験が行われました。

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■needs2:見満氏「インスパイア事業紹介」
インスパイアは、成毛眞さんがマイクロソフトから独立して立ち上げた会社で、本人のモットーである「大人げない大人になれ!」の精神漂う事業投資・コンサルティング会社です。
「立ち上げ時からベンチャーキャピタルとして活動してきて、今は新規事業開発に多数コミットするようになっている。大企業とベンチャーのコネクションが昔はできにくかったが、そこのマッチングをインスパイアで行う。大企業のプラットフォームを使えばベンチャーの技術もより面白くなる。事業会社出資でファンドを組成し、技術イノべーションを支援する、つなげる。」
ユーグレナのインキュベーションも行っているほか、『giftee』というカフェなどのスモールギフトを行う会社に今力を入れている。

以下、ユーグレナについて
ユーグレナはミドリムシの大量培養技術を2005年に東大生が発明し創業したが、何をビジネスにするか迷っていた。
⇒まずはクロレラのように健康食品事業として使うところから始めた。
⇒葉緑素があるので、CO2についての取り組み、油分が多いので、燃料としてなどにも広げる見込み。
大企業との資本提携が始まり、大手エネルギー、航空、広告企業などと組み始めている。
「投資と育成の双方の観点でインスパイアは取り組みをしている。事業環境、競争領域は急速に変化している時代で、そこを捉えることが大事。」
技術⇒サービス⇒ビジネス⇒マーケット⇒社会という順番で価値が広がっていくとのことです。

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■seeds×needsのマッチングとして:大槻氏「SNeeeds」
大槻さんは、もともと半導体の会社に勤めていましたが本人曰く違うビジネスをしたくなり、知財管理の会社に転職し、その後独立しましたが「今の日本には必ずしもシーズとニーズがマッチングする環境が整っていないのではないか、と気づいた。」そうです。
以下、大槻氏の司会で各ゲストとのトークセッションが行われました。

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■ゲストとのセッション
大槻:発明した技術などを世の中に出してビジネスにしていくには、個人では限界があり、大手企業と組んでいくにはどうしたらいいか?
松原:日本では個人は冷や飯食いの扱い。「自社の技術は自社で作る」が日本の前提なので、門戸が開いていない。ただ、企業内では閉塞感がある。でも外から来るものには抵抗がある。そのジレンマを何とか解決できれば。
大槻:自分はサラリーマン生活が長かったが、個人の方と仕事をしてみると、実にユニークな方が多い。なのに何でコラボレーションが難しいのだろうか?
松原:大手の電機メーカーの窓口にメールなどしてみても、反応があることはまずない。

大槻:企業にも所属している山川さんはマッチングの難しさについてどう考えるか。
山川:企業内で新規事業のオペレーションを考えると、初期費用などが嵩むことがあることと、技術の評価を誰がするのか、という問題がある。評価を「大手に委託してもダメだった」と言い訳が立つわけだが、誰かひとりがやる気になって進めることが必要。名声を上げるのには時間がかかる。
大槻:「目利き」の能力が大企業にはないように思える。

大槻:投資家としての目利きの部分は何が重要なのか?
見満:プレマーケティングのように、ある程度製品の形で投資法人などに持って回って評価してもらう形。投資の場合、デューデリジェンスというフェーズがあって、その期間にいろいろと評価をする。
大槻:プレマーケティングまでの製品の形に持っていくまでがシーズ側では大変。しかしシーズだけでは持って回れない。
見満:今、テクノロジーのシーズにお金を出せる人が減っているように思う。もっとリスクマネーを供給できるように、供給者を育成する必要もある。

大槻:新規事業をいくつも立ち上げているが、ネタはどこから探している?
守屋:エムアウトでは年間200くらいの企画が持ち込まれているのでいろいろあると思っている。その中で、何に本気になるか、という判断が大変。
エムアウトは投資会社ではないので、「やるならば入社してくれ」と言っている。入社して、その仕事にアサインするかもわからない、という言い方をすることもある。
リスクマネーという点では、立ち上げ時、160億を調達した。
会社の方針上、新規事業がうまく行ったら手放さなければいけないのがちょっと残念。
社内全員が新規事業をやっているので、悩む仲間が回りにいることが心強い。
大槻:最近はインキュベーション施設などもあり、人が集まったりするよう。
守屋:同じ会社、ということで密度が濃いコミュニケーションが取れていると思う。

■会場との質疑
「大企業に身を置いて、新規事業をやっているのだが、逆に自由に予算などできず、外から資金調達する方法はないか?」
見満:LLPの仕組みを使う場合がある。「共同事業」として資金を付ける場合はあるが、やはり外に出て別会社化して資金を付ける方がよい。
守屋:大企業が大企業の目線だけで話してもしょうがない。博報堂の本業と新規事業を比べても仕方ない。東急の学童保育の時にも、沿線の中で子供を預かるのはマズい、という。結局いろいろ選択肢から消えていき、本業の中の改善程度になってしまう。大企業の本業のコスト縮減と比べてしまうと意味が無い。
山川:ニフティを始めた時、上司にやってみろと言われた。しかし社内を通すためにはいろいろ会議が大変。社内では悪評が立った。
もう一人のパートナーは「決められる奴はわからない、わかる奴は決められない」決定権者ほど決められないが見通せている人間に決定権はない。言い訳を先に考える、ということ。ダイアゴナルの場合は、非常勤になったことでできた。ラッキーなことに、その他の企業から声がかかった。VCは何件か声がかかったが、一緒に汗をかいてくれる事業会社と組みたい。

「民間企業にいたが、大学に戻って新規のことを考えようと思ったが、大学の先生もフタを開けてみると『なんちゃって』であって産学連携がうまく行っていない。」
山川:似たような企業側の話で「企画部」は悪いと社内でよく言われる。提案するだけして逃げるから。企業はアイデアや技術の良さでなく、いくら儲かるか、だと思う。
見満:大学は発明して満足している。経営を前提にやれる人材をちゃんと据えないと産学連携にはならない
守屋:立ち上げをしたことのある人間を一人でも入れる。いないと、踏ん切りがつかないことが多いので。

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■「SNeeeds」デモ
最後に大槻さんが手掛けるマッチングサービス「SNeeeds」を作るに至った経緯について、デモを交えながらプレゼンテーションが行われました。
「企業は収益を目指すのでいくら儲かるのか、という視点で見る。研究者は自己満足が多く、世の中をこう変えよう、とまで思っていることが少ないのではないか?」
「研究開発のコンサルをやる中で、未活用の技術ができたのだが何か活かせないか?という相談が多かった。片や、大手企業のクライアントからは自社だけでは限界があるので、外から技術を取り込みたい、という相談が多かった。」
「これは、マッチングがうまく行っていないと感じた。しかもベンチャーの出口が今の日本に設定されていない。IPOも難しくなった。」
「前からTLOなどマッチングシステムはあるが、シーズありきなことが問題。ニーズありきで始めるものを作ろうと思った。」
「目利きの問題はずっと課題で、レイティングの仕組みを作ったりもしたが、やはり人の目でたくさん見てふるいに掛けることが一番ということでSNSを応用している。」
セッション終了後は懇親会が行われましたが、参加者の熱は高く、カタリストBAのリアルな空間でマッチングについての議論が引き続き展開されました。

以上

情報
開催:2012年2月9日(木)
主催:クリエイティブ・シティ・コンソーシアム

関連URL
IPエレクトロニクス株式会社「SNeeeds」 http://sneeeds.com/
ダイアゴナル株式会社 http://www.diagow.com/
株式会社MRSホールディングス http://www.mrshd.jp/
ケアプロ株式会社 http://carepro.co.jp/
株式会社インスパイア http://www.inspirecorp.co.jp/

寄稿者
東急電鉄/佐藤雄飛

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