アイデア創発ナイト『最新、知識創造の世界動向から実践ワークショップまで』
Post : 2012.02.06
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カタリストBAがオープンした2011年最後を締めくくったオープンラボは、‘クリエイティブ’を理論と実践の2方向からとらえるアイデア創発ナイトでした。前半は日本創造学会の元会長であり現在は北陸先端科学技術大学院大学の副学長、國藤進教授のご講演、後半はアイデアプラント代表の石井力重氏によるアイデア出しワークショップという、左脳右脳が刺激される内容でした。当日の様子を簡単にレポートさせていただきます。
國藤進教授からは、グループ知識創造についてKJ法などのクリエイティブメソッドから、教育法、プロトタイプまで広く具体的なお話をいただきました。今、中国やイギリスなどでもKJ法をふくむグループ知識創造が注目されているそうです。また、方法論だけではなくワークショップが大切とのこと。なぜ、ワークショップが必要なのかと言うと、無気力無感動な人間では役に立たない、創造性以前に問題意識の欠如が問題なのです。プロダクト、プロセス、マインドイノベーションが必須であり、マインドイノベーション=BAの共有が大事というお話でした。他にも具体例やフレームワークなど、示唆に富むお話でした。以下にトピックスを書き出しておきます。
・21世紀はイノベーティブ社会、そうじゃないと生き残れない。イノベーション=最も優秀なものではなく、もっとも環境に適応できるもの(進化論)
・クリエイティブな問題解決法について。発散思考、収束思考、ハイブリッド、創造的態度。
・W型問題解決について。問題提起⇒状況把握⇒アイデア出し⇒ネガポジ変換⇒問題解決方法の抽出
・KJ法の一番の特徴はボトムアップであること。データを集めるだけ集めて、次元がわかるという考え方に基づく。グルーピングの時に似通っているからという理由でまとめてはいけない。虚心坦懐に。
・コンピュータは「要求工学」の世界。富士通にいた頃にはアイデアサポートのアプリケーションをつくっていた。
・グループ知識創造を大学で座学として教えていたが、あまり良い成果が出ないと感じていた。とある学生の発案によりフィールドワーク中心の移動大学(Nomadic University)をやってみたら、PhDに進む学生が増え、就職してからも優秀な人材を輩出するようになった。今年は長野の黒姫山で2週間実施、今までに22回のセッションを行った。
・最近の活動で特に意識していることは、地域活性などリアルな問題をフィールドワークとKJ法で解決すること。「写真KJ法」などデジタルカメラで地域のいろいろなものを写真に撮ってきてヒントを見つける。地元の人にも入ってもらいまとまったアイデアを評価してもらう。最初は懐疑的な人もいたが、終わってみると高評価をもらえた。
・ビジネスエスノグラフィについて。文化人類学者とコンピューターサイエンスの人間がセットで現場に出ると良い結果が得られる。実際に、南極のクジラの現象がオゾンホールに原因があると突き止めた、世界的に評価の高い研究成果もある。富士通がフィールドイノベーション事業本部を作るなど、企業の取組みもはじまっている。
質疑応答
・写真KJ法の具体的方法は?
→一人50~100枚くらいの写真を撮ってきて、取捨選択しながらグルーピングしていく。グループが100超えると、整理が難しくなる。
・地域活性プロジェクトについて、住民の反応は?
→最初は冷ややかな人もいたが、終わってみると満足度は概ね高い。また、地域と行政で齟齬が出ることも多く、学生やNPOが間に入って橋渡しをすることも有効。
・グループ知識創造を世界でプレゼンする時、「禅の世界」など理解されるか?
→イギリスなど様々な人種がいる国の場合、コミュニケーションを簡潔にする必要があるので、意外と理解が早い。また、西洋のトップダウン思考とは違い、外れたアイデアが残り続けることが面白く感じるらしい。残り続けたアイデアが問題の根本を突き止める時に役立つことがある。
後半は石井力重氏にファシリテーションをお願いし、参加者全員でグループ知識創造を体験しました。テーマは、「アイデアの出る会議室」5~6人で1つのテーブルに座り、個人のアイデア出し→グループでブレスト→アイデアスケッチ(各人3枚程度)→ギャラリーウォークで全員投票、という流れでした。参加者によるアイデアスケッチは全部で130枚出来ました。投票は想像と反して偏らずに、1票~4票未満が一番多く、最高獲得数は17票でした。
当日参加してくださった皆様、ありがとうございます!ここに一部ではありますが出てきたアイデアを公開しますので、既に実現されている方、また実現してみたい方はぜひ主催者にご一報ください。
*カッコの数字は投票数
■空気を読む会議室(1)/ヒートアップしていたら青くしたり、誰も発言しなかったら、うるさくなったり赤くなったりし、空気を読んでくれる。イスもやわらかくなったりする。ブレイクタイムに自動的に入れる。
■会議当番(1)/社内で他人の会議にもコメンテーターとして出る役を順番にやる。
■言いたいことを言ってくれる会議室(1)/人の名前が出てこない、中高年の‘あれ・これ’を解決。スクリーンに映し出して「こんなこと言ってます」とサポート。
■イイネ!会議室(1)/発言のログが壁に表示される。手元にはイイネボタンがあり、いいと思ったアイデアに押す。イイネをたくさん集めたアイデアはどんどん大きくなる。
■変身仮面会議(2)/参加者の顔写真のお面を用意し、ランダムにかぶって会議、音声も変える。立場を気にせず、参加者も意識して発言できる。
■見える化会議室(2)/発言するとホワイトボードとかプロジェクターに自動的に書いてくれる。しかも、インフォグラフィックスのように図式化してくれる。
■電話会議(2)/同じ部屋で個室(電話ボックス)に入って、10円を入れて会話する。コストを意識しスピーディな話題展開ができる。
■コメンテーターと書記が住んでいる会議室(2)会議の内容やアイデアを全て記録してくれるばかりか、タイムリーにコメントしてくれる。良い、悪い、ここが足りない、など。
■体育会系会議室(2)/30分毎に運動が加わる。フォークダンス、なわとび、とび箱など。とびながらアイデアを考える。
■動く会議室(3)/動きながら会議する。発言するときも動く、動きながら頭が働く。
■サークルの部室みたいな会議室(3)/ターゲット顧客イメージに近い人に集まってもらう。部屋にその人たちの興味あるものを持参してもらい雰囲気をつくる。
■美男美女会議室(3)/面白いアイデアを出すと、美男または美女が笑ってくれる。
■環境映像付き会議室(3)/会議のテーマに合った「映像+音声+香り」。例えばエコがテーマなら、森林のイメージ、動物の鳴き声、森の香りなど。
■カメレオン会議室(4)/その日の雰囲気で、会議の場所を選べる。世界の各所、自然などの映像音楽がバックに映し出される。
■シャッフルTV会議(4)/発言内容で参加者をグルーピングしてくれるTV会議システム
■ボツアイデア会議(4)/過去ボツになったアイデアやテーマについて集中的に考える専用の会議デーがある。
■ポジティブルーム(4)/ネガティブな意見は壁にすいこまれ聞こえなくなる。ポジティブな意見のみで会話、意思決定する。
■自動タイムライン化会議(5)/会議の要点や盛り上がりを自動でプロットしてくれる。全体が一目瞭然なので発言や考えることに集中できる。
■居酒屋会議室(6)/居酒屋でのアツイ議論を酒の席だけに終わらせない。居酒屋なのにホワイトボードとポストイットがある。
■エレベーター会議室(8)/エレベーターの中が会議室で知らない人が乗ってくる。社長は最上階にいて、1分以内に説明しないとアウト
■家政婦のミタさんがいる会議室(11)/会議中に思い出せないワードをすぐ助けてくれる。議論が堂々巡りしたら、突っ込みを入れてくれる。疲れていたらチョコレートを出してくれる。
■音声認識自動KJ法(11)/みんなの発言が次々とカードになる。カードのグルーピングは自動に、すぐれたアイデアにはイイネがつく。
■釣り堀会議室(12)/何か単純作業しながら顔をあわせずに会議してみる。
■こども会議(16)/社会見学にきたこどもも大人の会議に混ざる。普通の視点でみた素朴なコメントをするが、けっこうイイコトを言ってくれる。
■激しく同意ミーティング(16)/1人だけ超うなずきながら傾聴してくれる人が参加。暴走発言にもマンツーマン対応。会議のモチベーションが上がり、すっきり満足感が得られる。
関連URL
アイデア創発システム
http://www.kokuyo.co.jp/press/2010/10/1093.html
寄稿者
コクヨRDIセンター/齋藤敦子