REPORT (CATALYST BA)

[report]EDGE TOKYO MEETING 2014『シェアを通じて見えるもの~invisibleな価値のシェア~』

分野    

Post : 2016.03.24
Permalink : https://catalyst-ba.com/archives/3604

EDGE TOKYO MEETING 2014『シェアを通じて見えるもの~invisibleな価値のシェア~』が開催されました。
これまで様々なテーマでトークセッションシリーズを開催してきたEDGE TOKYOシリーズ。
年に一度の開催であるMEETINGも3回目を迎えます。今回のテーマは「シェア」について。
多様な職業、ワークスタイルの人々が集い、空間や価値観を共有してきた、まさに「シェア」する場であるCATALYST BAで、これからの目に見えないシェアの価値を考えていく場になることを願って企画しました。
高まる期待感のもと、当日は100名を越える参加者が集まりました。様々な分野でクリエイティビティな活動を展開する4名のゲストとともに、熱を帯びたトークが繰り広げられます。

当日のプログラムは2部構成で開催されました。
1部は、オープンから3年半を迎えたCATALYST BAのこれまでの活動の振り返りと、今後の展望からスタートします。
東急電鉄 CATALYST BA担当の佐藤雄飛氏/加藤由将氏の両氏からお話をいただきました。

その後、モデレーターの松島倫明氏の進行のもと、各ゲストスピーカーからのポジショントークです。

テーマは「自分とシェア」についての関わり。様々な立ち位置から「シェア」という言葉が持つ多義性を感じることができます。
トップバッターは馬場正尊氏。

何かをシェアするという関係よりも、自分が何によって「シェア」されているかということを逆説的に考えてみた、という馬場氏。
自身が辿ってきた様々な経歴、活動をひも解きながら、たいへん興味深いお話をいただきました。「動く個人としてのネットワークハブ」「自分自身をオープンリソースとして見ている」というお言葉がとても印象的でした。

続いてのスピーカーはドミニク・チェン氏。

シェアがこれまでの、成果を皆で分け合うという“水平方向”から、ものをつくる過程やプロセスそのものをシェアすることが可能になる“垂直方向”のシェアがこれからのシェアのひとつの形なのではないか、というドミニク氏。
オープンコンテンツ/フリーカルチャーという、まさにネット社会の現代であるからこそ発生してきたシェアの価値観を、ご自身の体験を通じて鋭い切り口でトークいただきました。

最後のポジショントークは遠藤諭氏です。

ITやIoT(インターネットオブシングス)、デジタル情報サービスといった、「ソーシャル」や「シェア」という言葉を多用する世界において、今どういうことが起こっているのか、その領域はどこまで広がっているのか。これまでの「シェア」という概念ではおさまりきらなくなってくるほどに、何かをシェアするということは拡張を見せている、というお話でした。

三者三様の広範なトークが繰り広げられたところで、インターバルを挟み、後半のトークセッションのスタートです。

モデレーターの松島氏がまず挙げたのは、「シェア」という言葉から連想、イメージされるキーワード。分かち合う、分け合う、共感するといった同列に語られる言葉から、もう少し違う視座を持った、新たな階層を指し示す言葉まで。シェアという言葉からトークが展開していきます。

資本主義、ものを大量につくって消費するという社会を経て、ネットという環境を得たことによって、持たなくとも共有することができるシェアという概念。明るい方向で語られ始めているシェアという考え方が、実際にどういう形で生活に影響を与えたのか、そこから考えてみたい、と松島氏。

馬場氏:
「30年くらいのタームで、人間の欲望のコアが変わっていくと感じています。戦後すぐは豊かになりたい、その後はお金を稼ぎたい。今は幸せになりたい、というフェーズにあるのかな、と。それがシェアハウスをつくっている僕らの側から見ていると、透けて見えてくるような感覚があるんですね。特に今の時代の若者は、ひとつのコミュニティに対して着脱可能な感性、リテラシーを持っている。それは昔の昭和みたいなべったりした形とも違った、現代ならではのコミュニティの形だと思います。」

ドミニク氏:
「ネットの世界では、アメリカとか欧米の価値観を持って先行しているので、他者と考え方もポリシーも違うところを認めるところから始める、みたいなところがベースにあると思います。一方でミクシイやニコニコ動画などは、色々な意味で日本的に醸成されている。その差異を考えることもひとつのとっかかりになるのかな。」

遠藤氏
「幸せとか、脱資本主義という言葉も出てきましたけど、今の階層って上下じゃないんですよね。昔は搾取構造とかが必ず付いて回っていたんだけど、今はフラットに自分の時間を売るほう、クリエイティブなアイデアを出すほうが、対等かどうか分からないけど、いやらしくなくシェアをしあっている感覚はある。ゲーミフィケーションという言葉もあって、社会だと自分のやりたい仕事や階層を選べたりすることはあまりないんだけど、オンラインの中では相当に選べる自由がある。クラウドファンディングで出資を募ったり、クラウドソーシングに参加したり、関係がどんどん変化していく自由があるのがすごく面白いことかな、と思います」

馬場氏:
「人間は基本的に何かを発明する生き物じゃないですか。火も例えば原子力もそうで、ひとたび発見したらそれを便利に使い倒そうとひたすら突き詰めていって、どこかで行き過ぎたことのしっぺ返しがやってくる。それはテクノロジーの世界でもきっとそうで、そういったときにどう生き延びていけるのか。」

遠藤氏:
「二面性というのは必ずあると思います。ゲーミフィケーションがいいねと言いながら、機械に使われている側面がある。幸せになる為には何かに使われなければいけないという。」

話題はリアルなモノのシェアの話からオンラインの世界、価値観からこれからの世界の成り立ちについてなど、シェアという言葉から広範に広がっていき、いっそうの盛り上がりを見せる一夜となりました。
この場に居合わせた誰もが、新しいシェアの可能性を垣間みれた時間になったのではないかと思います。

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(以下、告知情報)


EDGE TOKYO(エッジトーキョー)はCATALYST BAが主催、co-lab二子玉川が企画協力をしているトークセッションをメインとしたイベントです。2012年秋にEDGE TOKYO MEETINGとして、『ビジネス×アート×デザイン×ポリシー』というテーマではじまりました。
その後、ひとつのテーマに特化したトークシリーズEDGE TOKYO DRINKS、そして実験的なライブパフォーマンスをメインとしたEDGE TOKYO LABORATORYとして、カッティングエッジなテーマとゲストを迎えて継続的に開催しています。
EDGE TOKYO MEETINGとして第3回目を迎える今回のテーマは「シェア」について。
CATALYST BAは”シェアする場”としてこの3年間多様な職業、ワークスタイルの人々がこの空間をシェアしながら価値を交換しあい、そして創造してきました。
この「シェア」で人々が交換している価値とはいったい何なのか、さらに「シェア」が繰り返されることによって、価値を交換する以上に生み出される見えない価値とは何なのか、CATALYST BAやEDGE TOKYOシリーズがこれまで何をシェアしてきたのか。
さまざまな分野でのトップランナーに見えている価値について”シェア”し、みなさんと共に考えたいと思います。

EDGE TOKYO MEETING 2014『シェアを通じて見えるもの~invisibleな価値のシェア~』

「シェア」はもうすっかり私たちの生活になじむ言葉となりました。SNSでの情報のシェア、シェアハウス、カーシェアリング・・・。シェアは「分かち合う」という言葉の本来の意味から、だんだんと「共有」を表すようにもなり、いわば新しい価値観ともなってきています。日常の一部となったような「シェア」について、シェアする場であるCATALYST BAで改めて一緒に考えてみませんか?
今回のEDGE TOKYO MEETINGでは モノや現象があふれてきているように見える現代においてもなお、シェアの概念を活かして、今までにはない新しいクリエイションをされてきた方々をゲストにお迎えしています。「シェア」により私たちが交換している価値とはいったい何なのか、また、価値を交換する以上に生み出される見えない価値とは何なのか、まずは様々な分野のゲストの方たちのクリエイションをシェアするところからはじめてみましょう。

※入場無料ですので、お誘い合わせの上是非ご来場ください!
※当日はトークセッション後の交流会も予定しております!

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■ 日 時:2014年11月28日(金)18:00開場/18:30開演(21:30終了予定)

■ 会 場:カタリストBA(世田谷区玉川2-21-1 二子玉川ライズオフィス8F)

■ 参加費:無料 ※ドリンク、フード付き
 
■ 定 員:100名(ご予約のお客様優先となります)
■ 出 演:
○ゲスト
馬場正尊(Open A ltd.代表)
ドミニク・チェン(NPO法人コモンスフィア<旧クリエイティブ・コモンズ・ジャパン>理事)
遠藤諭(株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員)
○モデレーター
松島倫明(書籍編集者<NHK出版>)

※これまでのEDGE TOKYOイベントの模様は以下でご覧いただけます
http://www.youtube.com/channel/UC9TTNtfSf-AISnRGvZm4ZFg

【予約方法】
peatixのウェブサイトからお申し込みください。
http://peatix.com/event/60094/

【会場へのアクセス】
東急田園都市線/東急大井町線二子玉川駅より徒歩1分

ライズオフィス8Fまでエレベーターまたはエスカレーターでお上がりください。
地図はこちら→ https://catalyst-ba.com/access.html
 
※ 20時以降にお越しの場合は正面エントランスからお入りいただけません。
受付までお電話ください(03-6362-3443)

【ゲスト プロフィール】

馬場正尊(Open A ltd.代表)
1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂で博覧会やショールームの企画などに従事。その後、早稲田大学博士課程に復学。雑誌『A』の編集長を経て、2003年OpenA Ltd.を設立。建築設計、都市計画、執筆などを行う。同時期に「東京R不動産」を始める。2008年より東北芸術工科大学 准教授。建築の近作として「TABLOID」(2010)、「観月橋団地」(2012)、「道頓堀角座」(2013)など。近著は『RePUBLIC公共空間のリノベーション』(学芸出版,2013)。


ドミニク・チェン(NPO法人コモンスフィア<旧クリエイティブ・コモンズ・ジャパン>理事)
フランス国籍。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了、同大学院博士課程修了。博士(学際情報学)。2001年より、様々な媒体でメディア論を中心とした論考を執筆。NPO法人コモンスフィア(旧クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)理事として、新しい著作権の仕組みの普及に努めてきた他、2008年に創業した株式会社ディヴィデュアルでは「いきるためのメディア」をモットーに様々なソフトウェアやアプリの開発を行っている。著書に「インターネットを生命化する プロクロニズムの思想と実践」(青土社)、「フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環」(フィルムアート社)など
Twitterアカウント名「@dominickchen」
写真撮影:新津保建秀


遠藤諭(株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員)
1990年よりIT総合誌『月刊アスキー』編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。雑誌編集のかたわらミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』、野口悠紀雄氏と協力して『「超」整理手帳』などを手がける。角川アスキー総合研究所では、ネット・モバイル時代のライフスタイルに関する調査・コンサルティングを行っている。アスキー入社前には80年代おたく文化を象徴する『東京おとなクラブ』を創刊、編集長をつとめる。著書に日本のコンピュータのパイオニアにインタビューした『計算機屋かく戦えり』、『ソーシャルネイティブの時代』など。週刊アスキーで「神は雲の中にあられる」を巻末連載中。

【モデレーター プロフィール】

松島倫明 (書籍編集者<NHK出版>)

書籍編集者(NHK出版)。1972年東京生まれ、鎌倉在住。村上龍氏のメールマガジンJMMやその単行本化などを手がけたのち、2004年から翻訳書の版権取得・編集・プロモーションに従事。ノンフィクションから小説までを幅広く手がけている。代表的なタイトルに、デジタルテクノロジーによるパラダイムシフトをとらえた『MAKERS』『フリー』『シェア』『パブリック』、小説『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』、ノンフィクション・ベストセラー『BORN TO RUN』など。最新作はピーター・ティール他著『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』。

[お問い合わせ]
下記メールアドレスまでご連絡ください。
futako_entry@co-lab.jp 

↓前回のEDGE TOKYO MEETING 2013 の模様↓

■主催:Catalyst BA
■企画協力:co-lab

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