REPORT (CATALYST BA)

[report] EDGE TOKYO LABORATORY 02 宮内優里 & onnacodomo『NWOH&M – New Wave Of Handycrafts & Manual arts – 』

分野  

Post : 2013.06.10
Permalink : https://catalyst-ba.com/archives/1526

EDGE TOKYO
『EDGE TOKYO LABORATORY(エッジトーキョーラボラトリー)』は、音楽と知覚の関係性にカッティングエッジなアプローチで向き合うアーティストを迎えたライヴ・パフォーマンス&トークセッションシリーズ。
今回は「NWOH&M(手工芸のニューウェーブ)」というテーマで、手元から手工芸のように生み出される音楽や映像に注目しました。
宮内優里とonnacodomoをゲストアーティストに迎え、様々な素材を駆使して鮮やかな音/映像を紡ぎ出すパフォーマンスを間近に体験することができました。

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まずはonnacodomoのパフォーマンス。最初に彼らがどうやって映像を作っていくかという簡単なレクチャーからはじまりました。

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2台のビデオカメラの下で、身の周りにある様々な雑貨やガジェット、色紙やペーパーバック、水、光などを組み合わせながら、おもしろい視覚効果を作っていきます。それをDJ codomoがミキサーを使ってライブ編集したものが映し出されます。

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意外なものから、思いもよらぬ効果が生まれ、それが常に変化していく様子は、その場でアナログ的な手法で作られているとは思えないモノがありました。

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きっかけは、レコードショップで今かかっている曲のジャケットをモニターに映しているのを見たこと、それと喫茶店でコーヒーの表面に光が反射しているのを片目をつむってみると奥行きが感じられた…といった経験からなのだとか。

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その後実際に音に合わせたVJのパフォーマンスが行われました。実にたくさんのアイデアで独自の世界を表現しており、手作り感やシュールな面白さ、意外性など、onnacodomoの持つ嗜好性が発揮されたライブでした。

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つづいて宮内優里によるパフォーマンス。
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こちらもonnacodomoに習って?まずは、自身の演奏法についてのレクチャーからスタートしました。ライブイベントでレクチャーからはじまるというのも珍しいことで、この場所ならではのことだと思います。

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宮内さんの演奏は、楽器をひとつずつ演奏して「ループサンプラー」といわれる装置に録音していきます。ある一定のフレーズを録音し、止めるのと同時に繰り返し演奏がはじまるようになっています。そこに続けていくつもの楽器を重ねていくことで、ひとつの音楽にしていくという仕組みです。

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淀みなく次々に音を重ねていき、ひとつの音からどんどん複雑に厚みを増していく音楽は、まさに職人芸を見ているような気持ちよさがありました。ひとりでこれだけの音を出せるというのも驚きです。

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ギター、鍵盤ハーモニカ、ドラムマシン、シェーカー、タンバリン(のようなもの)、ラチェット(工具)、そして数々ある楽器の中で一番得意だというトライアングル。確かにいままで見たこと、聴いたことのないトライアングルさばきでした。

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その後いよいよライブパフォーマンスの本番。流れるように次々と音を紡いでいきます。

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演奏後はみんなでトークセッション。
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せきやすこ、DJ codomo、野口路加、宮内優里。モデレータは安永哲郎さんです。

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安永:クライアントの注文があって作っているというお仕事は、何も条件が無い中で作っていくこととはまた意味合いが違うと思いますが、その辺どうでしょう?

DJ codomo:onnacodomoというのは生業になっているわけではないんです。VJやりはじめて9年くらいになりますが、4−5年前には1年に何十本もVJやっていたりしたじきもありましたが、それだけやっても食べれない。だからonnacodomoは完全にやりたくてやっているというのが、根っこにあります。だから仕事をonnacodomoとしていただくこともありますが、あまり無理をしないことにしています。メンバーそれぞれ映像制作、音楽制作、イラストという別の仕事を持っていて、その仕事とは分けて考えています。

野口:映像の仕事だと編集が必要になったり、きれいに仕上げたりする必要があると思うんですが。onnacodomoは編集なしでリアルタイムで出すのが特徴なので、そういう特徴が出せる仕事があれば良いと思います。

宮内:ライブも仕事として受けるので、すべてひっくるめて音楽というものを仕事としています。
昔は本当になんでもやっていましたが、やれる音楽の幅は限られているということに気づいてからは、自分の得意な範囲で受けるようにしています。
だんだんやりたいことと、クライアントからの仕事が重なってきて、今はすごくやりやすくなってきました。

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安永:みなさんはやりたくてこういう方法をはじめたんだろうなと思ったのですが。
それがだいろいろな人に触れる中で、自分から作品が離れていってしまったりとか、人が求めるものに寄っていかざるを得ないところがでてくると思います。
それでまず作品と仕事ということを聞きたいと思ったんですが、そもそもなぜこういう発明的な手法をやりはじめたのか、きっかけを教えてください。

宮内:根本的なことをいうと、この手法では本当にやりたい音楽はできない。
ふだんはパソコンを使って録音をして、それを加工して音楽を作るんですが、加工の部分が僕の音楽で多くの比重を占めています。
それがライブでは本当に少ししかできなくて、自分の腕2本でどうにかするしかないという制限があるので、音楽的な意味に限って言うとやりたくないということがある。
ただ最初はカラオケにギターだけを弾いているようなライブをやっていたのが、その場で録音するというパフォーマンスをはじめたら、お客さんがすごく見てくれるようになったんです。だから極力リアルタイムでやってエンターテイメント性を追求していくことで、今のような演奏法になっていきました。普段の制作活動では1ヶ月くらい時間をかけてやっていることを、無理矢理5分でやったということです。

安永:今はいろいろはソフトウェアが出て来て、だれでもそれらしい映像を作れる時代だと思いますが。
onnacodomoがこういう手法をはじめたきっかけというのはどういうものですか?

DJ codomo:単純にやってみたかったという。。

せき:誘われてやってみたらおもしろかったみたいな感じで。。
ただ昔からこういう手法はあるから、はじめはリアルタイムでやってますということをあまり売りにしたくないという気持ちはありました。
どうしたらきれいな映像ができるかとか、そういうことが普段のアニメーションづくりと違って、パッとストレスなくできることが面白くて、どんどんハマっていったという感じです。だから最初から特別な感じもしていなくて、ただ楽しくて良かったなという。

安永:それは何よりですね(笑)

野口:わたしもそうですね。映像とかVJにまったく興味がなかったんです。
その時は音楽をやっていて、ライブでVJとかやってくれていたんですが。練習の時にためしにやってみたら面白くて、そのまま今に至ります。。

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安永:素材選びとか素材探しは普段どんな風にしているんですか?

宮内:とりあえず楽器を買ってみるということを結構やっていて、その中で使えるもの、使えないものを探していきます。
ただひとつルールがあって、例えばお琴が鳴ると正月をイメージしてしまったりするように、その音が鳴った瞬間に世界が決まってしまうという楽器は好きじゃない。
じつは和太鼓の仕事もしているんですが、そういう民族楽器のようなものは民族音楽として聴きたいということもあります。
それに比べてギターとかピアノってわりと無機質に聴こえるなと思っていて、そういう世界が決まらない楽器が良いですね。

安永:onnacodomoは3人それぞれ選び方があると思うんですが。

DJ codomo:たとえばインドのカセットテープとか、小さい地球儀など、VJで使えそうな小物がすでに多く持っていました。
それでVJをやろうとしたときに、これをそのまま映せると思ったんです。3人ともそういう小物を持っていたので、最初持ち寄ってやっていました。
今日も100円ショップへ行って足りないものを買ってきたりしています。

安永:リハーサルの時と本番で違うことはあるんですか?

野口:今日もリハーサルでちょっと違うなと思っていて、本番で変えてみたけど、それも良かったのかわからない(笑)

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安永:音と映像では基本的に違うと思うのですが。たとえばonnacodomoは宮内さんの演奏をみてどんなこと考えていましたか?

せき:わたしたち3人いてすごくテンパってあの映像なんですが。段取りとか手順とか頭の中がパンパンで。。
宮内さんはひとりであんなにたくさんのことをやっていて、テンパったりしないんですか?

宮内:onnacodomoの場合はリアルタイムで全部進むじゃないですが、それで手を止められないというのがあると思うんですが。
一方ぼくの場合は手を止められるんですよ。途中で頭の中が真っ白になることとか結構あって、その時一回機械にまかせられるというのがあるんです。
ただボーカルの人といっしょにやったりするときは、寸分違わぬフレーズをやっていかないといけないので、パニックになります。
間違えると、その間違いが繰り返されるので、こわいときはありますね。

安永:宮内さんから見て、onnnacodomoのパフォーマンスはいかがですか?

宮内:どうやったら思いつくんだろうというものが、皆さんも見ていていっぱいあったと思うんですが、僕もそういうところを見せていきたいなと(笑)
発想が全部おもしろい。

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最後に宮内優里とonnacodomoによる共演です。事前の打合せはだいたい1分で終っていました。
その場の感じでやりましょうという、本当に即興的なパフォーマンスでしたが非常に親和性が高く、楽しい時間となりました。

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それぞれ独自の手法によるクリエイションで、これまで活躍されてきたアーティストです。そうした手法をもって、いかに仕事へ取り組み、またクライアントとつき合っていくか、クリエイターにとっても興味深い話を聞くことができたのではないでしょうか。そしてなにより目の前で次々に音や映像が生まれるパフォーマンスには目を奪われました。今後の活躍と、またこれをきっかけとした共演などが実現することを期待しています。

(以下、告知情報)
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『EDGE TOKYO LABORATORY(エッジトーキョーラボラトリー)』は、音楽と知覚の関係性にカッティングエッジなアプローチで向き合うアーティストを迎えたライヴ・パフォーマンス&トークセッションシリーズです。
第2回のテーマは「NWOH&M(手工芸のニューウェーブ)」。アーティストの手元から手工芸のように音楽や映像が生まれるマジカルな瞬間をお楽しみいただきます。
出演は、様々な楽器をたった一人で操りながら音楽を紡ぎ上げていく宮内優里と、身の回りの日用品などから次々に映像を生み出すVJユニットonnacodomo。
終演後には制作にまつわる様々なトピックへ切り込むアーティスト・トークもあり。
オフィスビルのワンフロアがアーティストたちの実験室になる一夜をお見逃し無く!

第1回(出演:蓮沼執太、梅田哲也)のレポートがこちらでご覧になれます↓
https://catalyst-ba.com/archives/1071

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『EDGE TOKYO LABORATORY 02』
 ■日 時:2013年7月3日(水)19:00開場/19:30開演(22:00終了予定)
 ■会 場:カタリストBA(世田谷区玉川2-21-1 二子玉川ライズオフィス8F)
 ■料 金:2,000円(1ドリンク&フリーフード付)
 ■出 演:宮内優里、onnacodomo
 ■定 員:100名(ご予約のお客様優先となります)

 [予約方法]
 下記メールアドレスに[お名前、メールアドレス、参加人数]をお知らせください。
 futako_entry@co-lab.jp 担当:中安(なかやす)

 [会場へのアクセス]
 東急田園都市線/東急大井町線二子玉川駅より徒歩1分
 ライズオフィス8Fまでエレベーターまたはエスカレーターでお上がりください。
 地図はこちら→ https://catalyst-ba.com/access.html
 ※20時以降にお越しの場合は正面エントランスからお入りいただけません。
  受付までお電話ください(03-6362-3443)

 主催:Catalyst BA
 企画制作:安永哲郎事務室 [http://www.jimushitsu.com]/co-lab[http://co-lab.jp/

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宮内優里(みやうち・ゆうり)
音楽家。1983年、和太鼓奏者の父とジャズシンガーの母のもとに生まれる。これまでに5作品のアルバムをRallye Labelよりリリース。アルバムには高橋幸宏、原田知世、小山田圭吾、星野源等をはじめ、国内外問わず様々なアーティストとのコラボレーション作品を収録。ライブではギターと打楽器を中心に様々な楽器の音をその場でサンプリング/ループし、たった一人で演奏する”音の実験室”ともいうべき空間を表現する。近年は、TYTYT (高橋幸宏+宮内優里+高野寛+権藤知彦)としてのライブ活動、海外アーティストi am robot and proudとのライブ/作品でのコラボレーション、国内外アーティストのリミックス/プロデュース、映画/CMへの楽曲提供など、活動の幅を広げている。
http://www.miyauchiyuri.com/

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onnacodomo(おんなこども)
ミュージシャンのDJ Codomo,アニメーション作家のせきやすこ、イラストレーターの野口路加の3人による異色のVJユニット。コンピューターグラフィックスや、録画素材 をいっさい使用せず、ビデオカメラの下で、水、キッチン用品、文房具、おもちゃ、印刷物など、日常にある様々なものを用い、リアルタイムに色鮮やかな映像をつくり出すライブパフォーマンスを展開中。
http://www.onnacodomo.com/

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