REPORT (GUEST)

[report]「都市型環境教育と次世代型コミュニティ-都市と自然の融合を目指したスマートコミュニティの可能性を探る-」

分野   

Post : 2015.11.19
Permalink : http://catalyst-ba.com/archives/3435

はじめに
2015年10月29日15時より二子玉川カタリストBAで、株式会社ランドスケープ・プラスと箱根植木株式会社の協同によるシンポジウム、「都市型環境教育と次世代型コミュニティ-都市と自然の融合を目指したスマートコミュニティの可能性を探る-」が開催されました。本シンポジウムは、二子玉川ライズ第二期事業のルーフガーデンにおいて、持続可能な価値を発信するアドバイザリーとしてのランドスケープ・プラスと、クリエィティブな植栽マネジメントを担う箱根植木が、サステナブルで多様性のある街づくりを実現した二子玉川ライズから、地域コミュニティの知的創造性を育成する都市型環境教育の可能性を考える場として企画しました。

ライズ第二期事業の概要について
基調講演に先立ち、二子玉川ライズ第二期事業の概要説明を行いました。
まず設計を担当したランドスケープ・プラスの板垣より、地域の自然環境や地勢構造を再現し、地域の生態系をつなぐ「エコミュージアム」としてのランドスケープ計画について説明を行い、続いて施工および管理を担当した箱根植木の渡邊より、流域の自然を再現するための材料調達と施工方法やエコミュージアムの教材としての可能性について説明を行いました。

基調講演01:官民学公の連携による流域再生と環境教育
まず基調講演として、二子玉川ライズ第二期事業においてカワラノギクの再生保存にご指導並びにご協力いただいた、明治大学農学部教授の倉本宣先生よりご講演をいただきました。倉本先生からは、カワラノギクプロジェクトにおける官民学公の連携や、ロンドンにてご自身が参与観察された保全ボランティアの活動内容やコーディネーターの重要性、都市型環境教育の手法のひとつとして市民が調査研究に参画することを楽しむ取組(シチズンサイエンス)についてお話しいただきました。

基調講演02:豊島区新庁舎における都市型環境教育の実践
続いて、ランドスケープ・プラスが設計を担当した豊島区の新庁舎にて、環境教育の取り組みを実践されている豊島区教育委員会の統括指導主事であられる細山貴信様にご講演いただきました。設計段階での環境教育プログラムの検討内容や、竣工後に行われている環境教育プログラムの状況についてご紹介いただき、環境教育の取り組みを通して、都市に住む子どもたちが地域への愛情を育んでいる様子をお話しいただきました。

パネルディスカッション01:「次世代型コミュニティ」について
基調講演に続いて、「都市型環境教育と次世代型コミュニティ」と題して、都市と自然の融合を目指したスマートコミュニティの可能性を探るパネルディスカッションが行われました。進行役としてランドスケープ・プラス代表取締役の平賀がモデレーターをつとめ、パネリストの皆様よりご自身の専門の立場から持続可能な地域社会を実現するための人的資源(=次世代型コミュニティ)についての考え方や意見をいただきました。

倉本宣教授
ロンドンのボランティア活動で感じたのは、対象となる場所が掲げるテーマに賛同して人々が集まっていること、活動の質がコーディネーターの質に連動していることなどの印象があった。ロンドンと比較して、日本のボランティア活動は、活動している場所をどうしたいかではなく、活動している人々がどうしたいかに時間を割いている印象があると感じた。今後は学生たちをボランティア活動に企画の段階から参加させるなどして、質の高いコーディネーターを育成したいと考えている。

細山貴信氏 
「豊島の森」での環境教育を現在実際に運用している中で、教育現場でのコーディネーターである先生が児童に行う解説の方法を標準化することが難しいこと、子供たちは大人が思う以上に、直接自然を体験することが好きであり、体験が大切な記憶として心に残るのだろうなということを感じている。子供の体験を知識につなげる方法を学校の先生と共有化し標準化することが今後の課題ではないかと思う。

平松宏城氏 
次世代型コミュニティ実現のため、地域金融機関が地域コミュニティを運営するタウンマネジメント組織等に金融面からの支援をする取組がなされている。地域住民、ディベロッパー、地域金融機関など様々な立場の人がサステナブルなまちづくりという同じ目標に向かっていく指標としてLEEDが活用されていくのではないかと考えている。

中村忠昌氏 
世田谷区立公園「すみれば」では、公園を作る前にワークショップを行い、公園の魅力づくり、運営づくりから地域コミュニティの協力を得たことで持続的な活動を続けられているのではないか。また、キーパーソンとして参加者をまとめる人、それをバックアップする人がいることが成功に繋がっていると考えている。

都甲義教氏 
地域に開かれた場というコンセプトを持つ二子玉川ライズ第二期事業を、地域の方々や働く方々、商業施設に訪れる方々とが有機的につながることができるコミュニティの場にすることが二子玉川らしい地域コミュニティのあり方であると考えている。また、LEED-NDやJHEPの認証を維持することを目標とするのではなく、ランドスケープ・プラスおよび箱根植木と協力しながら地域コミュニティを成長させる管理運営を進めていきたいと考えている。

パネルディスカッション02:「都市型環境教育」について
続いて、「都市型環境教育」を都市と自然が融合した社会を目指すための「人材育成」と定義し、人づくりやコミュニティづくりにおいて、都市型環境教育に関連するお考えやご意見をいただきました。

中村忠昌氏 
都市型環境教育をビジネスとして成立させる上では、行政からのしっかりとした金銭的な支援があることが重要であると考えている。二子玉川ライズでは、駅に近い立地条件を活かして身近な庭園としてのルーフガーデンと多摩川や国分寺崖線を連携させた子供向けのイベントを行うことや、コンテンツとして多摩川などに生息する地域の生態系を扱うことの出来るインタープリター等の人材育成が今後の展開を考える上で重要になるのではないか。

平松宏城氏 
多くのLEED認証取得があるポートランドは、車社会から脱却してウォーカブルで自然と近いまちづくりを進めており、その価値がいま世界から注目されている。二子玉川ライズと多摩川の関係のように人の暮らしと自然が近い日本では、ポートランドのような、人が中心となった自然と近い暮らしが出来るまちづくりを進めていくことが可能であると思っている。そういったまちづくりが大きなマーケットとなり得るのではないか。

都甲義教氏 
二子玉川の自然環境を象徴するエコミュージアムでは、菜園広場を地元の小学生へ開放するなどの取り組みを行っている。今後はオフィステナントである楽天の託児所や住宅棟の保育園など、地元の人と連携して食育を行ったり、生き物を学ぶ場にしていくことで、子どもたちの教育の場としてエコミュージアムを活用していきたい。

細山貴信氏 
マンションの売り出しの際には、必ずといっていいほど学校までの距離が記載されている。このことは、豊島区のような古い街と新しい街が混在する地域コミュニティで子どもたちの成長を見守るために、学校が地域コミュニティの中心になりうることの現れだと思っている。

倉本宣教授 
私の研究室では、急激に減少しつつある首都圏の生物多様性を保全・再生し、人と自然とのかかわりを再構築することをテーマとしている。分類学的なテクニックを習得することに加えて、地理情報システムやシチズンサイエンスなどの手法を積極的に取り入れている。これからは野外調査技術のみならず、市民と共に研究調査を行うための研究技術を大切にしていきたいと考えている。

まとめ
シンポジウム、パネルディスカッションを通して、次世代コミュニティにおけるコーディネーターの重要性や経済的な支援方法、環境教育の手法を議論しながら、二子玉川ライズが今後担うべき地域コミュニティにおいての役割が議論される会となりました。パネルディスカッション後は、都市型環境教育の可能性を議論する参加者の活発な交流が行われる様子もみられ、盛況のうちに終了となりました。

[開催概要]
日時:2015年10月29日[木]15:00-17:30
場所:カタリストBA
主催:株式会社ランドスケープ・プラス + 箱根植木株式会社
参加者:80名

関連する記事

REPORT (GUEST)

 [report]futacolab「ARTLINE」新ラインアップ発表会... 2015.01.05 posted

  

REPORT (GUEST)

 [report]地域課題を解決する地理空間オープンデータを用いたハッカソン... 2014.11.20 posted

  

REPORT (GUEST)

[report]ミズベリングニコタマ会議... 2014.05.15 posted